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第55話 カメラ・オブ・スクラは心臓捕らふ(前半)

last update 最終更新日: 2025-11-18 06:07:44

 ぽん、と大きな手が、わたくしの頭の上に置かれる。

 ゴツゴツの手のひら、この温かさ。……なんだか、涙が出てきてしまいそう。

「うう……わたくし、パパの、娘で、よかったですわ……」

「大げさな奴だ。ひとまず、及第点にしても――家門の“誇り”をよく守った」

「はいっ!」

 ああ、パパの目には、シャーデフロイの令嬢として“誇り”を守り抜いた振る舞いに、きちんと映っていたのね。

「……たまには、息抜きも必要だろう。明日、アカデミーは休め。せいぜい、羽を伸ばすがいい」

 ぶっきらぼうな優しさが、なんだか無性に嬉しくて。

 その後、「だが、もっとやり方は考えろ」「あと、ママに心配をかけるな。いいな! くれぐれもな!?」とか、色々、こまごま注意もされちゃったけれど。

 思ったよりも、ずっとずっと、あっさりと書斎から解放されたの。

(やったぁあああっ、屋敷のみんなと離れなくていいんだわっ!)

 実感とともに、喜びがこみあげて来て。わたくしは溢れんばかりの笑顔で、場をあとにする。

 ただ……去り際に、パパがなにかを吐き捨てた。

「にしても。せっかく、あの夜。あえて貸しを作ってやったと言うのに。……なにも生かせぬとは、あの青二才めが」

 でも、よく聞こえなかったし、気にすることでもないと思うわ。たぶんね。

***

「――というわけでしてよ、イヅル! お父様ったら、わたくしのこと、大絶賛だったわ!」

「左様でございますか。それはそれは、何よりでしたね」

 自室に戻ったわたくしは得意満面、我が忠実なる執事に報告。

 気分は、すっかり上々! なんだか、ずっと胸につかえていたものが、すっと取れたみたい。

「ええ、そうですわ! なんだかね、今夜は空が綺麗に見えるの!」

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